ホームchevron_right技術資料一覧chevron_rightGPCchevron_rightGPC-FTIRchevron_right高温GPC(SEC)-FTIRによる高分子の解析
技術資料
No.T1412 | 2015.03.26

高温GPC(SEC)-FTIRによる高分子の解析

~ポリエチレン/ポリスチレン ブレンド試料の分子量測定~

概要

GPC(SEC)–FTIR法を用い、特定の官能基に由来する赤外吸収ピークに着目すれば、ブレンド試料中の特定成分のみの平均分子量や分子量分布を求めることが可能となります。ここでは、ポリエチレン/ポリスチレン ブレンド試料の分子量測定を行った例をご紹介します。

内容のご紹介

一般的なGPC装置で用いられているRI検出器(示差屈折計)は、試料と溶離液(溶媒)との屈折率差に基づいて試料濃度を検出するため、溶離液よりも屈折率が高い試料(屈折率濃度増分;dn/dc > 0)のピークは正側に検出されますが、溶離液よりも屈折率が低い試料(dn/dc < 0)のピークは負側に検出されます。
従って、もしdn/dcが正・負となる複数の成分がブレンドされている試料をGPC測定した場合、良好な溶出ピークが得られない場合があります。その例として、ポリエチレン(PE;dn/dc < 0)とポリスチレン(PS;dn/dc > 0)をブレンドした試料の高温GPC(検出器:RI検出器,溶離液:1,2,4-トリクロロベンゼン)によるクロマトグラムを図1に示します。この試料の場合、通常の高温GPC測定では平均分子量や分子量分布を計算することができません。

図1 PE/PSブレンド試料の高温GPCクロマトグラム
(検出器:RI検出器,溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン,カラム温度:140℃)

このような場合には、高温GPC-FTIRを用いることにより、PE、PSそれぞれの平均分子量を求めることができます。以下にその例を示しました。

1.試料

市販のPEとPSのブレンド試料(50:50 (wt%/wt%))

2.分析条件 

装   置 : HLC-8121GPC/HT (東ソー製) + Avatar370 (Thermo Nicolet製)
カ ラ ム : TSKgel GMHHR –H(20)HT (7.8mmφ×30cm) 2本 (東ソー製)
溶 離 液 : 1,2,4-TCB
カラム温度 : 140℃

3.結果

高温GPC-FTIRにより得られた3D-クロマトグラムを図2に示します。ここでは、PEとPSのメチレン基に由来する2926cm-1の吸収ピークと、PSのベンゼン環に由来する3026cm-1の吸収ピークによる溶出ピークが検出されました。

図2 PE/PSブレンド試料の3D-クロマトグラム (波数-溶出時間-吸光度)

図2に基づいて分子量計算を行い、得られたPE、およびPSの分子量分布曲線を図3、4に、平均分子量を表1に示します。なお今回は、それぞれの単独試料も分子量測定を行って結果を比較しました。

 

1 平均分子量計算結果(値は標準PS換算値)

表1より、今回得られたPE/PSブレンド試料中のPE、PSの平均分子量は、それぞれを単独で測定して得られた平均分子量と非常に良い一致を示していることが分かります。なお、図4で両者の誤差がやや大きかった理由は、ブレンド試料ではPSの濃度が1/2になったため、強度の低いベンゼン環由来のピークでは誤差が大きくなったためと考えられます。
高温GPC-FTIRを用いることにより、通常の高温GPC測定では困難な、PE/PS ブレンド試料中のPE、PSそれぞれの平均分子量を求めることが可能となります。今回の例は、dn/dcが正・負で異なるポリマーブレンド試料だけでなく、同様にdn/dcが正・負で異なるモノマー単位から構成された共重合体(例:エチレン-スチレン共重合体)の分子量測定でも有効となります。 

適用分野
GPC
キーワード
GPC、PE、PS、ポリエチレン、ポリスチレン

CONTACTぜひ、お問い合わせください

弊社の分析技術について、納期やコストについてご検討の方は、
お問い合わせフォームより問い合わせください。