ホームchevron_right技術資料一覧chevron_rightGPCchevron_right高温・超高温GPCchevron_rightマイクロプラスチックの分析(2)
技術資料
No.T2004 | 2020.05.07

マイクロプラスチックの分析(2)

~FT-IRとGPCを用いたポリエチレンの分析~

概要

マイクロプラスチック(以下MPと記す)とは、5mm以下のプラスチックと定義されており、プラスチック製品の破片、化学繊維、レジンペレット、マイクロビーズ、スポンジなどが起源とされています。MPによる海洋汚染は食物連鎖により生態系全体に広がっていることが懸念されており、ヒトへの有害性について関心が高まっています。そこで、弊社では種々の方法でMPの分析を試みています。
今回はマイクロプラスチックの中でもポリエチレンをターゲットとし、FT-IRとGPC分析を実施した例を紹介いたします。

試料

【図1】 マイクロプラスチックの光学顕微鏡写真
(試料提供:京都大学大学院地球環境学堂 准教授 田中周平 先生)

分析

1.FT-IR

装 置 :顕微FT-IR  IRT-3000/FTIR-4100 (日本分光製)

2.GPC

装 置 :HLC-8321 (東ソー製)
カラム :TSKgel guardcolumHHR(30)HT×1+TSKgel GMHHR-(20)HT×3 (東ソー製)
溶 媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
温 度 :140℃

測定結果

【図2】にFT-IRスペクトルを示します。-(CH2)n-の振動に由来するピークが1470、729、719cm-1付近に強ピークが観測されたことから、ポリエチレンであると推定されました。
【図3】にGPC分析から得た微分分子量分布曲線を示します。いずれの試料も試料量は1mg以下と微量でしたが、明確なGPCピークが観測されました。
【表1】に、FT-IRから得たカルボニルインデックス(CI:A1715/A1470)とGPCから得た分子量の結果を示します。一般的には未劣化PEは、カルボニル基由来のピークはほとんど観測されないのに対し(CI<0.01)、今回の4試料は、いずれも比較的大きなCI値が観測されており、劣化が著しいと推定されました。
試料①~③のMwは約2~3万でした。マイクロプラスチック化する前の分子構造が不明なため、どの程度分子量が変化したかを把握することは困難ですが、通常のポリエチレン(2~30万程度)に対して分子量が低いと推定されました。④円柱状のものはMw=7.5万であり、他4点よりも平均分子量が大きいことがわかりました。

【図2】 マイクロプラスチック(PE)のFT-IRスペクトル
【表1】 マイクロプラスチック(PE)の分析結果

試料名

試料量

FT-IR

GPC

mg

カルボニルインデックス

Mw

Mw/Mn

A1715/A1470

①緑

0.4

0.54

1.6E+04

2.9

②橙

0.1

0.54

2.6E+04

2.7

③白(平板)

0.6

0.39

1.6E+04

3.7

④白(円柱)

0.2

0.49

7.5E+04

8.9

【図3】 マイクロプラスチック(PE)の微分分子量分布曲線
適用分野
環境分析、異物分析
キーワード
マイクロプラスチック、GPC、SEC、分子量測定、赤外分光法、IR、劣化

CONTACTぜひ、お問い合わせください

弊社の分析技術について、納期やコストについてご検討の方は、
お問い合わせフォームより問い合わせください。