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技術資料
No.T2008 | 2020.05.29

気相化学修飾ESCAを用いたポリマー表面官能基の解析

概要

ポリマーフィルムなどの接着性(濡れ性)には、表面の極性官能基(水酸基(OH)やカルボキシ基(COOH)等)が関与していると考えられており、その評価は重要です。
ポリマー表面官能基の解析にはESCA(XPS)が適しますが、特定の官能基(水酸基とエーテル基(C-O-C)、カルボキシ基とエステル基(-COO-)など)は通常分析では区別が困難です。弊社では、「気相化学修飾法」を用いて特定の官能基の同定・定量分析を行うことができます。今回は、気相化学修飾ESCAを用いたポリマー中の水酸基およびカルボキシ基の定性・定量分析についてご紹介します。

分析内容

1)水酸基の定性・定量分析

水酸基に無水トリフルオロ酢酸((CF3CO)2O)を反応させることで定性・定量分析が可能です(反応スキーム1)。

<反応スキーム1>
【表1】ESCA測定により得られた反応後の  PVA組成分析結果 [atom%]

C

O

F

測定値

46.4

20.4

33.2

理論値

44.4

22.2

33.3

 

ポリビニルアルコール(PVA)中の水酸基へ反応させた前後のC1sスペクトルを図1に示します。反応後ではトリフルオロアセチル基由来ピーク(-COO-, -CF3)として水酸基を区別できます。組成分析より、PVAが100%反応した際の理論値と近い値を得ることができました(表1)。本手法により、水酸基の定性・定量分析が可能です。

【図1】ポリビニルアルコール(PVA)の無水トリフルオロ酢酸反応前後のC1sスペクトル

2)カルボキシ基の定性・定量分析

水酸基と同様、カルボキシ基についてもトリフルオロエタノール(CF3CH2OH)等を反応させて定性・定量分析が可能です(反応スキーム2)。

<反応スキーム2>
【表2】ESCA測定により得られた反応後のPAA組成分析結果 [atom%]

C

O

F

測定値

50.3

20.4

29.3

理論値

50.0

20.0

30.0

 

ポリアクリル酸(PAA)中のカルボキシ基へ反応させた前後C1sスペクトルを図2に示します。反応後、トリフルオロエタノール由来ピーク(C-O, CF3)としてカルボキシ基を区別でき、組成分析結果も理論値と整合するため、本手法によりカルボキシ基の定性・定量分析が可能です。

C:\Users\237467\Desktop\HP技術資料\気相化学修飾法\技術資料_図\PAA.png
【図2】ポリアクリル酸(PAA)のトリフルオロエタノール反応前後のC1sスペクトル

結果

気相化学修飾ESCAによるポリマー表面の官能基(水酸基、カルボキシ基)の解析は、濡れ性を向上させる表面改質処理(プラズマ、オゾン処理等)前後の評価などにも適用することができます。

適用分野
高分子化学、表面科学
キーワード
ESCA(XPS)、ポリマー、官能基、水酸基(OH)、カルボキシ基(COOH)、気相化学修法、接着性、濡れ性

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