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技術資料
No.T2118 | 2021.09.17

特定1H原子核の運動性評価

~ 2次元NMR 1H-13C T1H-HSQC測定 ~

概要

溶液NMRを用いて1H原子核の緩和時間を解析し、溶液内における分子の状態や運動性、分子間相互作用等を評価することが可能です。弊社では、通常の1次元の緩和測定を2次元NMRに展開し、1Hピーク重複領域においても各1H原子核の緩和時間を解析可能です。今回は、2次元1H-13C HSQC測定をベースとした1H原子核の縦(T1H)緩和時間の解析例をご紹介します。

分析方法・分析装置

・分析方法:2次元1H-13C T1H –HSQC*1    *1 Heteronuclear single quantum coherence
・分析装置:700MHz NMR、500MHz NMR

以下にパルスシーケンスダイアグラムを示します。

【図1】2次元1H-13C T1H-HSQCのパルスシーケンス
  *2 1H核の縦緩和時間
  *3 13C核の展開時間

試料

ラクトース(ガラクトースとグルコースがβ-1,4-グリコシド結合した二糖)の重水溶液(5wt%)

結果

ラクトースの1次元1H NMRスペクトルとT1H緩和時間解析結果を図2に示します。単独で存在する1HピークについてはT1H緩和時間を算出することができますが、ピーク重複領域は一意的なT1H緩和時間の算出は不可能でした。
今回、2次元1H-13C T1H–HSQCにより13C方向に各1Hピークを分離することで、ピーク重複領域の各1H原子核についても一意的なT1H緩和時間の算出が可能となりました(図3)。ガラクトース(Gal)残基内においても、1位(グリコシド結合部位)の1Hの方が3位の1HよりもT1H緩和時間が短く、局所的な分子運動が制限されていることが分かりました。

【図2】ラクトースの1次元1H NMRスペクトルと縦緩和時間(T1H)の評価
*4 12C及び13C核と結合した1H核の縦緩和時間
【図3】ラクトースの2次元1H-13C T1H-HSQCスペクトルと縦緩和時間(T1H)の評価
*5 13C核と結合した1H核の縦緩和時間

まとめ

1H原子核のT1H緩和時間を解析することで、分子の状態や運動性を評価することが可能です。有機化合物の分子構造の確認や相互作用の検出、分子サイズの評価等に役立つと期待されます。

適用分野
NMR、運動性、構造解析、相互作用、分子サイズ
キーワード
糖鎖、天然物、有機化合物、分子構造解析、医薬品、化粧品、農薬

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