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技術資料
No.T2019 | 2020.08.21

マイクロプラスチックの分析(4)

~FT-IRとGPCを用いた徐放性肥料プラスチックの分析~

概要

マイクロプラスチック(以下MPsと記す)とは、5mm以下のプラスチックと定義されており、プラスチック製品の破片、化学繊維、レジンペレット、マイクロビーズ、スポンジなどが起源とされています。MPsによる海洋汚染は食物連鎖により生態系全体に広がっていることが懸念されており、ヒトへの有害性について関心が高まっています。そこで、弊社では種々の方法でMPsの分析を試みています。
今回は徐放性肥料プラスチックをターゲットとし、FT-IR分析およびGPC分析を行った例を紹介いたします。

試料

徐放性肥料とは、作物の生育に合わせて少しずつ中の肥料が溶け出すよう、化成肥料をプラスチックでコーティングしたものを指します。使用後にプラスチック部分が海へ流出し、さらに微粒子化することが問題となっています。
今回の分析では、水田および吉崎海岸(三重県四日市市)で採取された徐放性肥料と、新品の徐放性肥料(市販)(図1)について、プラスチック部分を各種分析により比較しました。

【図1】 徐放性肥料(新品及び使用後の採取品)
(試料提供: 四日市大学 環境情報学部 千葉 賢 教授)

分析

1.前処理

測定前に試料を半分に割り、沸騰水にて洗浄

2.FT-IR

装 置 :顕微FT-IR  IRT-300/FT-IR-4100 (日本分光製)

3.GPC

装 置 :HLC-8321GPC/HT (東ソー製)
カラム :TSKgel guardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5cm)×1本
    + TSKgel GMHHR-H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)×3本 (東ソー製)
溶 媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
温 度 :140℃

測定結果

【図2】にFT-IRスペクトルを示します。試料①~③は全てポリエチレン+タルクであると推定されました。スペクトルが類似していることから、試料②および③は試料①と同製品もしくは同等品であると推測されます。
【図3】にGPC分析から得た微分分子量分布曲線を示します。また、【表1】にFT-IRから得たカルボニルインデックス(C.I.:1715cm-1と1470cm-1の吸光度比)とGPCから得た分子量の結果をまとめました。
一般的には未劣化ポリエチレンではカルボニル基由来のピークはほとんど観測されませんが(C.I.<0.01)、劣化が進行するとカルボニル基が生成することで、カルボニル基由来のピーク強度が上昇します。しかし今回、試料①(新品)のFT-IRスペクトルにおいて1715cm-1付近にカルボニル由来のピークが確認されたことから、C.I.の比較により劣化の度合いを推定することは困難でした。1715cm-1付近のピークは、添加剤もしくは他の混合物由来であると推測されます。また、試料①~③においてMw、微分分子量分布曲線の結果はほぼ同等であったことから、水田及び吉崎海岸で採取された徐放性肥料プラスチックは、新品と比較して劣化はほとんど進んでいないと考えられます。
今回のようにFT-IRやGPCによる分析により、環境中で採取したプラスチックと市販品の材料種や、その劣化状態の情報が得られます。

【図2】 FT-IRスペクトル
【図3】 微分分子量分布曲線
【表1】 カルボニルインデックス及び分子量測定結果

試料

定性

カルボニルインデックス(A1715/A1470*)

GPC

Mw

Mw/Mn

①新品(市販)

PE+タルク

0.51

1.1×105

4.8

②採取品(水田)

PE+タルク

0.65

1.0×105

4.7

③採取品(吉崎海岸)

PE+タルク

0.72

1.1×105

5.1

* A1715/A1470 : 1715cm-1と1470cm-1の吸光度比

適用分野
環境分析、異物分析
キーワード
マイクロプラスチック、GPC、SEC、分子量測定、赤外分光法、IR、劣化

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