【装置紹介】電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)
技術レポート:No.A2202 / 2022.6.10
概要
最新の電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)を導入しました。高分解能・高感度な組成分析や元素マッピングが可能です。本資料では、エネルギー分散型X線分光法(EDS)や汎用EPMAと比較したFE-EPMAの特長を示します。
装置
導入したFE-EPMAは、サブμm以下の高分解能かつ0.01wt%レベルの高感度分析が可能です【表1、図1】。
【表1】FE-EPMA概要
装置 | 日本電子製JXA-iHP200F | 検出感度 | 0.01wt%レベル |
---|---|---|---|
分析元素範囲 | B〜U | 最大試料サイズ | 100mm×100mm×50mm |
加速電圧 | 1〜30kV | 最大測定領域 | 90mm×90mm |
照射電流 | 1pA〜3μA | WDS検出器 | 5基 |
空間分解能 | 20nm (10kV, 10nA) | EDS検出器 | 1基 |


【図1】FE-EPMA外観
【図2】WDSとEDSの検出方法
EPMAは波長分散型X線分光法(WDS)とも呼ばれ、試料に電子線を照射して発生する特性X線を分光結晶で回折させて取り込むため、EDSと比べてエネルギー分解能や検出感度に優れます【図2】。
本装置ではWDS検出器を5基、EDS検出器を1基搭載しており、主成分元素をEDS検出器で、微量元素を5基のWDS検出器で同時分析できます。
分析事例
1. ジルコニアセラミックスの定性分析
EPMA(WDS)の特徴である定性能力について分析事例を紹介します。
ジルコニアセラミックスのZrとYの定性分析はEDSのエネルギー分解能が低いため判別が困難です。
一方、エネルギー分解能がEDSよりも高いWDSで分析すると、ZrとYのピークを明確に判別することができます【図3】。高分解能なFE-EPMAにより、元素の偏析を評価することが可能です。

【図3】ジルコニアセラミックスの定性分析スペクトル
2. 真鍮の元素マッピング分析
FE-EPMAはFE電子銃により試料に照射する電子線を細く絞れるため、汎用EPMAでは不可能な微小領域の元素マッピング分析が可能です。(空間分解能:FE-EPMA 20nm、汎用EPMA 1μm)
FE-EPMAで真鍮(CuとZnの合金)の元素マッピングを行った結果、バルクに数%含まれるPbがサブμm〜μmサイズで偏析している様子が可視化できました【図4】。

【図4】真鍮のFE-EPMAマッピング結果(25.6 μm×19.2 μm)
まとめ
FE-EPMAは、EDS及びEPMAと比べて高分解能かつ高感度な定性・定量分析や元素マッピングが可能な手法です。
分析元素はB〜Uと幅広く、当社保有の断面作製技術を併用することで試料表面以外に試料内部の分析にも対応できます。
適用分野 : セラミックス・ゼオライト、その他無機製品、その他有機製品
材料キーワード : FE-EPMA、WDS、EPMA、EDS、定性分析、元素マッピング、ジルコニア、セラミックス、真鍮