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技術資料
No.T2107 | 2021.08.11

潤滑膜の分析手法

~潤滑油により形成される膜成分の組成及び化学種の解析~

概要

モリブデン(Mo)含有潤滑油は自動車エンジンオイルの代表的な摩擦低減剤で、摩擦面に形成される膜成分(潤滑膜)が低摩擦化に寄与します。X線光電子分光法(ESCAまたはXPS)により潤滑膜の表面組成及び化学種を解析した事例を紹介します。

試料

以下の通り調製した潤滑膜の分析を実施しました。
Mo系摩擦低減剤を含む市販エンジンオイルを金属基板上に塗布
 →摩擦試験(表面温度50℃,試験時間5min)【図1】

事例紹介

1)潤滑膜の表面組成分析

試料のワイドスキャンスペクトル(全元素分析結果)及びMo3d高分解能スペクトルを図2に示します。
ESCAの分析深さは数nmと浅いため、表面に存在する有機汚染物が試料由来ピークの検出を妨害します。当社ではArガスクラスターイオン銃(GCIB)を用いた表面クリーニングにより有機汚染物のみを除去でき、潤滑膜の表面組成解析が可能です【表1】。

【図2】 潤滑膜のワイドスキャンスペクトル及びMo3d高分解能スペクトル

【表1】表面組成分析結果(単位:atom%)

2)潤滑膜の化学状態解析

潤滑膜に含まれる成分のうち、二硫化モリブデン(MoS2)は低摩擦化に寄与することが知られています1~3)。ESCAは元素の化学状態を解析できるため、Mo中のMoS2比率を評価できます【図3, 表2】。

 

引用文献

  • 1)駒場ら:MoDTC添加油の潤滑効果に対する温度の影響,トライボロジスト,62,11 (2017) 35.
  • 2)山田ら:MoDTCの摩擦低減機構,日石三菱レビュー,43,1 (2001) 5.
  • 3)高木:MoS2族の層状構造と摩擦,精密機械,46,11 (1980) 1434.
適用分野
その他無機製品
キーワード
潤滑油、潤滑膜、モリブデン、Mo、MoS2、摩擦低減剤、低摩擦化、ESCA、XPS、表面組成、化学状態

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