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技術資料
No.T1713 | 2017.07.01

TEM基礎講座 ①原理

概要

透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope 以下TEM)は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope 以下SEM)と並び、微小領域の形態観察を行う電子顕微鏡です。
SEMの観察像が、試料表面からの二次電子や反射電子を使って可視化するのに対し、TEMでは、試料の透過電子を使って可視化します。このため、TEM観察では電子が透過できる厚さ(約100nm)まで試料を薄片化する技術が必要であり、このことが観察を難しくする一因となっています。
本基礎講座では、初めにTEMの原理について概説します。 その後、第二回でポリマーのTEM観察に必要な各種試料作製法について、第三回ではポリマー構造の観察例を紹介します。

TEMの原理

1)装置構成

TEMでは、試料に電子を照射し、透過してきた電子を蛍光板に投影したり、CCDカメラで捉えることによって可視化します。TEMの装置構成は、基本的に透過型光学顕微鏡に類似しています。プローブである電子は可視光に、電子銃は光源ランプに、電磁レンズは光学レンズに各々相当します。(図1参照)。

【図1】 光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡(TEM)の装置構成比較

2)イメージコントラスト

試料を透過した電子は、試料との相互作用により一部が散乱します。 この散乱現象に起因するコントラストを散乱コントラストと呼びます。散乱が強い部分では透過電子が減少し、暗く見えるようになる(コントラストが現れる)ことで、周囲との識別が可能となります。
散乱電子は試料の電子密度が高いほど増加します。金属材料や無機材料のように、重元素からなる試料においては、像の明暗の序列は、ほぼ原子番号順(原子番号大ほど暗)となります。
軽元素からなる試料(生物試料、高分子材料等)においては、構成元素(C、N、O)の散乱効果がいずれも弱いため、重元素を含む染色剤で選択染色を行って、散乱コントラストを付与します(図2-1参照)。 選択染色による試料作製法については、第二回でご説明します。
コントラストには、他に位相コントラストと回折コントラストがあります。 位相コントラストは、干渉しあう電子線の位相差に由来するもので、フレネルフリンジや格子像が代表例です(図2-2参照)。 回折コントラストは散乱コントラストの一種ですが、回折現象に伴う電子の散乱により生じるコントラストを指します。
多結晶体に現れるコントラストがその例です(図2-3参照)。

【図2-3】 セラミックスコンデンサーの結晶像
(回折コントラストの例)
キーワード
ポリスチレン系ブロックマー、マンガン酸リチウム、セラミックスコンデンサー

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