血中異常細胞の受託解析
当社では、血中循環がん細胞(CTC : Circulating Tumor Cell)などを含む血中異常細胞の解析を受託しています。
独自の細胞検出チップと誘電泳動による技術で、血中異常細胞の検出からがん関連遺伝子変異解析までを一貫して
実施します。
血中異常細胞とは
血液中に存在する血液細胞以外の細胞で、がんの原発巣から遊離・浸潤したがん細胞、CTC等を含みます。これらの細胞は、がんの転移に関わっている可能性があり、治療効果の確認等への利用1)や、低侵襲なリキッドバイオプシーとして注目されています2)。
当社では、血液中に存在する抗CK(サイトケラチン)抗体陽性細胞と陰性細胞を検出しますが、CK陰性細胞はがん細胞とは断定できないため、これらの細胞を総称して「血中異常細胞」と呼んでいます。

1) K. Pantel, RH. Brakenhoff, B. Brandt, Nat. Rev. Cancer , 8, 329(2008)
2)C. Alix-Panabieres, K. Pantel, Clin. Chem ., 59, 110(2013)
血中異常細胞解析技術
通常血液は、細胞成分と液体成分(血漿)、タンパク質などから成っています。細胞成分には主に赤血球、白血球、血小板などが含まれますが、固形がんなどの疾患があると腫瘍由来の細胞が血管内に侵入することがあります。血中に移動した細胞ががん細胞の場合、血管を通じて他の臓器へ生着することにより、がんの転移が生じます。また、このようながん細胞は悪性度が高く、上皮細胞由来であっても、上皮間葉転換(EMT:Epithelial- mesenchymal transition)と呼ばれる現象が起こることは珍しくありません。EMTを起こした細胞は上皮細胞の特徴が失われCKのような上皮マーカーでの検出は難しくなります。
当社では、2010〜2014年度にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施したプロジェクト「血液中のがん分子・遺伝子診断を実現するための技術・システムの研究開発」において東ソー株式会社が開発した細胞解析システムを導入し、高感度な解析技術で血液中のCK陽性およびCK陰性細胞を測定します。
受託分析項目
- 血中異常細胞数測定
- CK陽性細胞
- CK陰性細胞(大径)
- がん関連遺伝子変異解析
細胞検出チップ
分析方法
血液中の血球成分を取り除き、血中異常細胞を濃縮します。
細胞濃縮液を細胞検出チップへ導入し、誘電泳動技術を用いて、細胞を微細孔内に固定、整列します。
その後、蛍光標識した抗CK抗体で検出し、CK陽性細胞およびCK陰性細胞数の測定を行います。
血中異常細胞の濃縮
血液サンプルは、溶血試薬によって赤血球を除去し、磁性ビーズにより白血球を吸着除去して血中異常細胞を濃縮します。

細胞固定・整列
細胞検出チップに細胞懸濁液を導入し、誘電泳動技術を用いて細胞を微細孔内に固定、整列します。

標識・検出
抗CK抗体、抗CD45(白血球マーカー)抗体、DAPI(核マーカー)で蛍光標識することにより、
血中異常細胞を検出します。

CK陰性細胞を検出することで、EMTを起こした細胞やCK低発現細胞も見逃すことなく測定できます。
検出した細胞は回収し、がん関連遺伝子変異解析(Cancer Hotspot Panel v2/Thermo Fisher Scientific)が可能です。
臨床データ
前立腺がん患者のモニタリング結果

モニタリング開始から病態悪化に伴いPSA値、CK陽性細胞数ともに上昇傾向を示しました (測定1-3)。抗がん剤変更後(測定4-5)、PSA値は一時的に下降しましたが、画像検査上は病態悪化を示し、CK陰性細胞数の上昇がみられました。
CK陰性細胞は、PSAと比較して早期に病態悪化を検出できる可能性を確認しました。
回収細胞の遺伝子変異解析

臨床検体より回収された細胞のがん関連遺伝子変異解析を行いました。体細胞変異解析では、TP53遺伝子の変異が多く検出されました。特に、ナンセンス変異やミスセンス変異などの機能喪失に繋がる変異が多数見られました。
*白血球との比較による体細胞変異解析は納品物に含まれません。
データ提供元:東ソー株式会社および杏林大学
関連資料
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- High-Density Dielectrophoretic Microwell Array for Detection, Capture, and Single-Cell Analysis of Rare Tumor Cells in Peripheral Blood.
Morimoto A, Mogami T, Watanabe M, Iijima K, Akiyama Y, Katayama K, Futami T, Yamamoto N, Sawada T, Koizumi F, Koh Y.
PLoS One. 2015 Jun 24
PMID:26107884 -
- Diversity of circulating tumor cells in peripheral blood: Detection of heterogeneous BRAF mutations in a patient with advanced melanoma by single-cell analysis.
Kiniwa Y, Nakamura K, Mikoshiba A, Akiyama Y, Morimoto A, Okuyama R.
J Dermatol Sci. 2018 May;90(2)
PMID:29426605