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技術資料
No.T2315 | 2023.12.07

高分子レオロジー1

~z平均分子量の影響1 零せん断粘度~

概要

 高分子レオロジーの基本的なパラメーターである零せん断粘度η 0は重量平均分子量Mwに依存します。
 本技術資料では、ゼロせん断粘度への分子量分布の依存性として、z平均分子量と重量平均分子量の比(Mz/Mw)が重要なパラメーターである事をご紹介します。通常は考慮されることの少ない、z平均分子量ですが、数平均分子量や重量平均分子量と同じく重要な平均分子量と言えます。

検討

 高密度ポリエチレン(HDPE)の文献報告例を用い検討しました。

結果

【図1】零せん断粘度η <sub>0</sub>の重量平均分子量Mwに対する両対数プロット
【図1】零せん断粘度η 0の重量平均分子量Mwに対する両対数プロット

 図1に溶融状態(190℃)の零せん断粘度η 0を重量平均分子量Mwに対して両対数プロットで示しました。図中の赤で塗潰したが工業的に重合されたHDPE、その他の記号がHDPEあるいは直鎖状ポリエチレンLLDPEについて報告された結果です。また、赤い破線はRajuらが報告した単分散の1,4重合のポリブタジエンを水添して得た単分散ポリエチレンに関する結果、青い破線はStadlerらが報告した単分散に近い直鎖状ポリエチレンに関する結果です。各々の破線は、Mw3.5乗に依存する結果を与えています。

 図2には、Stadlerらが提案したように、η 0を(Mz/Mw)で除した結果を重量平均分子量Mwに対して両対数プロットで示しました。

【図2】 零せん断粘度η<sub> <span>0</span></sub>を(<span>M<sub>z</sub>/M<sub>w</sub></span>)で除した結果の重量平均分子量Mwに対する両対数プロット
【図2】 零せん断粘度η 0を(Mz/Mw)で除した結果の重量平均分子量Mwに対する両対数プロット

 図1と図2を比較するとη 0を(Mz/Mw)で除した図2の場合の方がMwに対する依存性のばらつきが少なくなりました。すなわち、η 0Mw3..5ではなく、Mw2.5Mzに依存すると考えた方が良い結果です。別に提案されている依存性についても検討しましたが、(Mz/Mw)により零せん断粘度を除した場合に、ばらつきが最も少ないことが分かっています。
  高分子の溶融体の粘度を考察する際には、分子量分布として(Mw/Mn)だけでなく、(Mz/Mw)を考慮した方が良いと言えるでしょう。
 なお、測定条件、先行研究などの詳細は、参考文献1)を参照してください。

まとめ

 GPC測定の結果で得られる、z平均分子量は、溶融レオロジーの重要なパラメーターである零せん断粘度の記述に有用であることが検証できました。
 なお、本資料の図1及び図2は、日本ゴム協会誌に投稿した結果1から、(一社)日本ゴム協会編集委員会の許諾を得て掲載しました。

参考文献
1) 髙取永一, 日本ゴム協会誌, 95, 266-273 2022Figure 7.
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適用分野
プラスチック・ゴム、その他高分子材料
キーワード
ポリエチレン、GPC、分子量、分子量分布、粘度

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