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装置紹介
No.A1202 | 2014.04.01

GPC(SEC)-FTIR装置(溶離液蒸発型)

1.概要

GPC(SEC)装置にFT-IR検出器を併用することで、組成分布解析や、未知成分の分離同定が可能になります。ここでは、溶離液蒸発型のGPC-FTIR装置について解説します。

2.GPC-FTIR装置

GPC-FTIR装置には、大きく分けて2種類あり、1つはフローセル型(図1)、もう1つは溶離液蒸発型(図2)です。



【図1】 フローセル型のGPC-FTIR模式図

【図2】 溶離液蒸発型のGPC-FTIR模式図

フローセル型は、かなり昔から用いられてきましたが、測定試料が限定されることもあり、最近では限られた目的、試料にのみ用いられているようです。(測定例は、弊社技術資料「GPC(SEC)-FTIR法による高分子の構造解析(1)~(3)」を参照して下さい)
溶離液蒸発型は、フローセル型に代わって広く用いられるようになってきた装置で、カラムから溶出した溶離液をネブライザーから噴霧して溶離液を除去し、残った試料を回転するゲルマニウム板に連続的に吹き付けていきます。(図3)

GPC測定後、このGe板をFT-IRの試料室の専用ユニット(図5(b))にセットし、Ge円板を回転させながら、試料のIR測定を行います。(図4)

装置の写真を図5に示します。

【図5】 装置の写真

フローセル型と溶離液蒸発型の比較を表1に示します。

表1 フローセル型と移動相蒸発型の比較(常温GPC)

フローセル型

溶離液蒸発型

①溶離液

クロロホルム

THF, クロロホルム等

(沸点 < 約100℃)

②解析波数

溶離液の吸収領域以外

4000~800cm-1

③定量性

 

溶離液蒸発型の最も大きな長所は、試料の赤外吸収スペクトルが溶離液の赤外吸収に影響されないことです。このため、通常の固体試料の測定と同様、測定波数全体の赤外吸収について解析することが可能です。フローセル型は溶離液の赤外吸収領域は解析できず、この理由から、溶離液は吸収領域の少ないクロロホルム等に限られるため、測定対象試料が限定されます。一方、溶離液蒸発型では、溶離液が蒸発できさえすれば、種類には限定されません。このため、GPC測定で最も広く用いられているTHFを用いることが可能であり、応用範囲が大きく広がります。
フローセル型(溶離液:クロロホルム)と移動相蒸発型(溶離液:THF)で測定したスチレン-MMA共重合体のIRスペクトルを図6に示します。フローセル型の場合、溶離液(クロロホルム)の吸収領域は試料のスペクトルを得ることはできません。

【図6】 フローセル型と溶離液蒸発型のIRスペクトルの比較 (スチレン-MMA共重合体)

以上のように、溶離液蒸発型のGPC-FTIRを用いることで、フロー型では困難であった、THF系などのGPC-FTIR測定による組成分布解析や、未知成分の同定などを行うことができ、様々な知見を得ることができます。
上記のスチレン-MMA共重合体の組成分布測定結果を図7、8に示します。

 

【図7】 スチレン-MMA共重合体のGPC-FTIRクロマトグラム (3D-クロマトグラム)
【図8】 スチレン-MMA共重合体の組成分布測定結果
   (分子量分布曲線はRI検出器の出力信号により計算)

最後に、溶離液蒸発型のGPC-FTIRで対応しにくい条件を記載します。

  • (1) 定量分析(赤外吸収の絶対強度による定量、解析)
    ピーク強度は固着した試料の形状に影響されます。従って、解析については、特定波数のピーク強度比を用います。
  • (2) 溶離液への不揮発塩の添加、および高濃度の揮発塩の添加
  • (3) 高沸点の溶離液の使用(常温タイプはDMF等の極性溶媒は不可)
  • (4) 低沸点化合物、熱に不安定な化合物の分析

 

キーワード
スチレン-MMA共重合体

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