概要
ガス透過性はフィルムの特性としてよく評価されています。一言で、透過性と表現していますが、この指標の中には、①ガスがフィルムにどれくらい溶け込むか(溶解度)、②ガスがフィルム中をどれくらい早く移動するか(拡散速度)、といった特性の影響を含んでいます。
ガス透過試験の方法を工夫すると、これらの指標を分けて評価することができます。ここでは、ポリエチレンシートを取り上げ、水蒸気透過度(透湿度)試験から溶解度係数、拡散係数を評価した事例をご紹介します。
分析事例の紹介
図1に示すようなGC法水蒸気透過試験装置を用い、ポリエチレンシートから透過してくるガス量を測定し、ガス拡散係数を評価しました。
透過係数(透湿度係数)と拡散係数、溶解度係数は以下の関係にあります。
透過係数(透湿度係数) = 溶解度係数 × 拡散係数
図2に低密度ポリエチレン(LDPE、密度920㎏/m3)の値を高密度ポリエチレン(HDPE、密度949㎏/m3)の値で規格化し、まとめました。LDPEはHDPEに比べ透湿度係数が大きく、密度の影響が表れています(弊社技術レポートT1007参照)。
一方、溶解度係数と拡散係数の係数比を比較すると、拡散係数の係数比の方が大きくなりました。このことから、透湿度係数が大きくなる要因として拡散係数の影響が大きいことが分かります。
ガスの拡散係数は、試料中のモルフォロジー(結晶の状態など)に強く影響をうけると予想されることから、高次構造をかえることでガスの透過性を制御できる可能性が示唆されます。
適用分野
ガス透過試験
キーワード
樹脂、HDPE、LDPE