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技術資料
No.T1717 | 2017.08.05

[基礎講座] 高分子物性の世界 2 ~ 異方性・配向 ~

はじめに

本シリーズでは、高分子らしさについて分析的な立場から取り上げます。学術的な正確さよりも、分かりやすさに重点を置きますの で、一部、正確ではない記述があるかと思いますが、ご容赦ください。

測定の方向は正しい?

第二回目は、異方性・配向について取り上げたいと思います。
高分子は強固な共有結合で紐状に結合された分子鎖の集合体で構成されています。そのため、分子鎖に沿った方向と、分子鎖と垂直方向では物性が著しく異なる、異方性をもともと持っています。
平衡状態では、液晶高分子など特殊な場合を除き、分子鎖はランダムな方向を向いています。しかし、高分子を成形加工する際、殆どの場合は、流動を伴い配向します(特定の方向に分子鎖が引き延ばされた状態)。そのため、様々な物性値に異方性が出てくることになります。
異方性が現れる代表例が、引張物性や熱膨張です。例として図1にポリエチレンフィルムの引張特性を、図2にPETフィルムの線膨張を示しました。
図1からMD(フィルムの成形方向)の破壊強度が大きいことが分かります。一方、TD(MDと垂直方向)は、伸びが大きくなっています。おそらく、分子鎖が加工方向へ配向した影響だと推定されます。
図2から、PETフィルムの加熱に伴う形状の変化が分かります。一般的に樹脂は加熱によって膨張します。しかし、分子鎖が配向している場合、温度上昇に伴って分子鎖の運動性が大きくなると配向状態から平衡状態に戻ろうとするため収縮が起きます。PETのガラス転移温度は約80℃であるため、この温度以上で収縮が始まっています。また、MDとTDで異なる挙動を示すのは、PETフィルムは複雑な延伸処理を施して成形されるためだと考えらます。
ここに示す例は極端かもしれませんが、例えば、単純なプレス成型品ですら、肉厚方向に表面から内部へ向かって残留応力が残る場合があり、物性評価結果に影響を及ぼす場合があります。
高分子の物性評価の際には、評価の目的に合致している方向で評価しているか、十分に注意する必要があると言えます。
また、逆に言えば、複数の方向から物性値を評価し、異方性を把握する方法も考えられます。

 

キーワード
異方性、配向、物性、引張、線膨張、ポリエチレン、PET

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