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技術資料
No.T1725 | 2017.12.19

高分子物性の世界3 ~ 履歴の影響 ~

はじめに

本シリーズでは、高分子らしさについて分析的な立場から取り上げます。学術的な正確さよりも、分かりやすさに重点を置きますので、一部、正確ではない記述があるかと思いますが、ご容赦ください。

試料の履歴は?

第三回目は、試料の履歴について取り上げたいと思います。
多くの高分子は、“緩和”という現象を起こします。緩和現象の詳細については弊社基礎講座「高分子レオロジー 第二回」を参照ください。大雑把にいえば、試料の状態が環境によって経時で変化する、という現象です(材質は変化しない)。そのため、同じ材料、同じ成形法であっても、どのような環境で、どのくらいの期間保管されていたか、という履歴で状態が変化し、物性が変わってしまいます。
図1は、同一材料で異なる履歴の試料をDSC評価した事例です(一回目の昇温データ)。ペレットは成形直後の試料、A~Cはペレットを異なる環境下で保管した試料です。80℃近辺にガラス転移温度に起因する段差が見られていますが、その様子は試料間で異なっています。各試料を融点以上に昇温し、装置内で冷却後、再測定すると、全ての試料が同じ挙動を示すことから、材料は変質していない事が確認できました。このように試料間で異なる挙動を示したのは、履歴による緩和が起きたためです。なお、モジュレーテッドDSCを使うと、図1のデータから履歴の影響を排除して材料本来の挙動と履歴の影響を分けて評価することができます。詳細はお問い合わせ下さい。
図2は、食品ラップを昇温-降温させた際の長さ変化(線膨張挙動)を測定した事例です。通常、昇温すると膨張しますが、60~80℃以上で収縮が起きていることが分かります。これは、昇温に伴って分子運動が活発になり、成形時の配向が緩和した事を示します。昇温時に配向は緩和しきってしまうため、降温時には昇温時に見られたような急激な変化は起きていません。
これらの事例が示しているのは、同じ試料であっても、履歴が異なると、見かけ上、評価結果が異なるという事です。そのため、高分子の物性を比較する際には、履歴を揃える必要があります。逆に、評価結果の変化から、履歴を推定する、ということも行われています。

キーワード
緩和、配向、アニーリング

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