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技術資料
No.T2207 | 2022.08.23

MALDI-TOF/MSによるウレタン原料(ポリオール)の解析

概要

ポリウレタンは様々な用途に使用される合成樹脂であり、主原料としてイソシアネート(NCO基)とポリオール(OH基)からウレタン結合(-NH-CO-O-)をつくることで重合されます。原料の組み合わせ等によりポリウレタンの物性が大きく変わるため、原料の解析は重要です。分子量数千の軟質ウレタンフォーム用ポリオールについて、MALDI-TOF/MSにより解析した例をご紹介します。

分析方法

ポリオールをマトリックス及びイオン化助剤と混合し、試料プレート上に滴下・乾燥させてMALDI-TOF/MS測定に供しました。(MALDI-TOF/MSの測定原理は技術レポートNo.A2201参照)

結果

ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)のMSスペクトルを図1、図2に示します。PEGとPPGはそれぞれC2H4O(12×2+1×4+16×1=44Da)(EO)、C3H6O(12×3+1×6+16×1=58Da)(PO)の繰り返し単位を持つポリマーです。
PEG(図1)では、m/z 3300付近を中心としてm/z 44間隔のイオンが検出されました()。イオンの間隔から、ポリオールの繰り返し単位がC2H4Oであることが分かり、また各イオンの質量から末端構造(開始剤)がエチレングリコールであることが分かりました。

【図1】 PEGのMALDI-TOF/MSスペクトル

PPG(図2)では、m/z 700及びm/z 2800付近を中心とする2系列のイオンが検出されました(及び、イオンの間隔はいずれもm/z 58)。イオンの間隔から、繰り返し単位はC3H6Oであることが分かります。2系列のイオンは末端構造が異なるPPG成分であり、質量からm/z 700付近のイオンは環状体(副生物である環状オリゴマー)、m/z 2800付近のイオンはグリセリンが開始剤と推定されました。

【図2】 PPGのMALDI-TOF/MSスペクトル

続いて、繰り返し単位がEO・PO共重合系であるポリエーテルポリオールの測定結果を図3及び図4に示します。
ポリエーテルポリオールA(図3)ではm/z 3200付近を中心として込み合った多数のイオンが検出されました。共重合系では各モノマー(ここではEOとPO)の数の組み合わせが無数に存在するため、m/z 44間隔とm/z 58間隔が組み合わさった非常に混雑したスペクトルとなります。そのため質量分析から得られる情報は分子量等に限定されてしまいます。繰り返し単位や開始剤の詳細な解析は1H, 13C NMR等が有効です。

【図3】 ポリエーテルポリオールAのMALDI-TOF/MSスペクトル

ポリエーテルポリオールB(図4)ではm/z 7200付近を中心としたイオンが検出されました(得られる情報は図3と同様)。主に多価イオンで検出されスペクトルが複雑になるESI-MS等と異なり、MALDI-TOF/MSでは分子量数千の化合物をそのままのm/z (1価イオン)で検出できることが特長です。

【図4】 ポリエーテルポリオールBのMALDI-TOF/MSスペクトル

まとめ

ウレタン原料であるポリオールをMALDI-TOF/MS解析することで、分子量、繰り返し単位*、末端構造(開始剤)*を推定できます(*試料によっては困難な場合があります)。分子量数千の高分子量成分をそのままの質量で検出できるため、含有成分の直感的な理解が可能です。本技術を応用してウレタン分解液のスクリーニング解析(技術レポートNo.T2117参照)が可能となります。

適用分野
プラスチック・ゴム、その他有機材料
キーワード
ポリウレタン、軟質ウレタンフォーム、ポリオール、PEG、PPG

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