概要
高機能・高性能なゴム関連製品の開発において、ゴムの分子構造と物性との関連性を把握することが重要です。固体NMRでは材料をそのまま測定できるため、溶媒に不溶な架橋ゴムの構造解析や組成分析が可能です。本資料では、膨潤固体NMRによる架橋ニトリルゴム(NBR)のモノマー組成分析事例をご紹介します。
試料及び分析内容
NBRは、アクリロニトリル(AN)とブタジエン(BD)とが共重合した合成ゴムで、モノマー組成の変化により耐油性、耐熱性、耐寒性等の物性が変化します。架橋NBRのモノマー組成解析を行うため、定量的な評価が可能な13C DDMAS NMR測定を行いました。また、CDCl3で膨潤させた試料を測定に用いました。
分析方法・分析装置
分析方法 | 13C DDMAS NMR |
分析装置 | 400MHz NMR |
結果
CDCl3で膨潤した架橋NBRの13C DDMASスペクトルを示します【図1】。膨潤により分子運動性を向上させることで、通常の固体試料(黒)に比べ高分解能なスペクトルが得られました。120~140 ppmを拡大すると【図2】、ピークbでは配列の異なる成分が分離して観測されました(A:AN、B:BD)。1) AN、BDのピーク積分比より、モノマー組成はAN:BD = 22:78でした。

【図1】架橋NBRの13C DDMAS NMRスペクトル

【図2】スペクトル拡大図(120~140 ppm)
まとめ
膨潤固体NMRにより、不溶なゴムやエラストマーの高分解能スペクトルを取得することが可能です。通常の固体NMRでは困難な、モノマー組成や配列解析等への応用が期待されます。
参考文献
1) B. G. Willoughby, Polym. Test., 8, 45(1989).
適用分野
高分子材料
キーワード
膨潤固体NMR、モノマー組成、連鎖分布