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技術資料
No.T1824 | 2018.08.13

微小角入射X線回折法によるポリマー表面の結晶性評価

概要

結晶性高分子の表面物性は、成型体最表面の構造と密接な関係があると言われています。本技術資料で紹介する微小角入射X線回折法は、表面近傍の構造を評価するのに有用な分析方法です。本手法を用いると、表面からナノオーダーの深さ領域で、結晶性高分子の結晶化度や配向性を評価できます。また、入射角を制御することにより、深さ方向で結晶性が変化する様子も評価できます。

粉末X線回折(XRD)と微小入射XRDの違い

図1、2に通常の粉末XRDと微小角入射XRDの光学系を示します。
通常の粉末XRD測定は、X線源と検出器を持ち上げるように動かして角度を変えながら測定します。試料に対してX線が傾いた角度で照射されるため、試料内部までX線が侵入します。そのため、バルク(試料表面+内部)の情報を得る事が出来ます。
一方、微小角入射XRD測定ではX線を試料に対して浅い角度(すれすれ)で照射します。測定はX線源を試料面に対して浅い角度で固定し、検出器のみを水平方向に動かして測定します。このようなX線を浅い角度で入射する測定条件では、試料表面付近までしかX線が侵入しません。そのため、微小角入射XRDは通常の粉末XRDとは異なり、試料表面数十nmのみを高感度に分析できる特徴があります。

 分析事例の紹介

<HDPE表面の結晶性評価>

微小角入射X線測定を利用し、高密度ポリエチレン(HDPE)成型体の深さ方向の結晶化度の変化を解析しました。図3に異なるX線入射角度(ω)で測定したXRDプロファイルを、図4にXRDプロファイルから計算した結晶化度とX線入射角度(ω)の関係を示します。X線の入射角度を0.15~0.30度の範囲で変えることで試料内部へのX線の侵入深さを制御して測定しました。X線の入射角度が浅いほど表面の情報を取得しています。
図4より成型体の表面ほど、結晶化度が低くなる傾向にあることを明らかにすることが出来ました。
以上のように、微小角入射X線回折法により、ポリマーの極表面の結晶構造や深さ方向の結晶化度の変化を観測することが可能です。

適用分野
結晶性高分子、薄膜、電池・半導体材料、液晶材料
キーワード
X線回折(XRD)、微小角入射X線回折法、In-plane回折、結晶構造解析、界面

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