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技術資料
No.T2519 | 2025.12.22

GPC-TOF/MSによるポリプロピレングリコールの構造解析

概要

 GPC法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー)は、溶液中における分子サイズの違いに基づいて成分を分離する液体クロマトグラフィーの1種です。SEC(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)とも呼ばれ、高分子の分子量および分子量分布を測定する手法として知られています。
 一般的なGPC測定ではRI検出器が使用されますが、化学構造に関する情報を得ることはできません。そこで本資料では、GPCの後段に質量分析計(MS)を接続し、サイズ排除機構による分離と、MSによる構造解析を組み合わせたGPC/MSによって、ポリプロピレングリコール(PPG)の構造を解析した事例をご紹介します。

試料

 市販のPPG(平均分子量4000

装置・分析条件

GPC

Agilent製 infinity 1260

MS

日本電子製 JMS-T100LPTOF型)

カラム

東ソー製 TSKgel G3000HXL5 µm, 7.8 mm×30 cm

溶離液

THF +メタノール(10 mMギ酸アンモニウム含、ポストカラム添加)

イオン化法

ESI+

結果

 市販PPGGPC-TOF/MS測定により得られたクロマトグラムを図1に示します。ここでは、クロマトグラム上の12.5 min16.0 minにおけるピークabのマススペクトルを取得し、解析を行いました。

【図1】市販PPGのGPC/MSクロマトグラム

【図1】市販PPGGPC/MSクロマトグラム

(1) ピークa12.5 min)のマススペクトル解析

 解析結果を図2に示します。ここでは、m/z 12001700 の範囲に見られる3価イオンのピークを解析対象としました。赤印で示すスペクトルの測定精密質量を解析した結果、図中に示すようなグリセリンを開始剤として重合されたPPGであると推定されました。分子式から見積もられた計算精密質量との誤差も非常に小さいことから、推定構造の妥当性が高いことが示されました。

【図2】ピークa(12.5 min)のマススペクトル解析結果

【図2】ピークa12.5 min)のマススペクトル解析結果

(2) ピークb16.0 min)のマススペクトル解析

 解析結果を図3に示します。m/z 5001000 の範囲に見られるマススペクトルをピークaと同様に解析した結果、図中に示すような末端に二重結合を有する副生物であると考えられました。計算精密質量との誤差も小さいことから、推定構造の妥当性が高いことが示されました。

【図3】ピークb(16.0 min)のマススペクトル解析結果

【図3】ピークb16.0 min)のマススペクトル解析結果

まとめ

 市販PPGGPC-TOF/MS分析により、主成分である高分子量成分と、合成時に副生したと考えられる低分子量成分の解析が可能でした。このようにGPC/MSでは、RI検出器では得られない化合物の構造情報を、サイズ排除機構に則って得ることができます。

適用分野
プラスチック・ゴム、添加剤、その他有機製品
キーワード
GPC、質量分析、MS、ポリオール

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