ホームchevron_right技術資料一覧chevron_rightGPCchevron_right常温GPCchevron_rightGPC法 (SEC法)入門講座
技術資料
No.T1001 | 2013.10.01

GPC法 (SEC法)入門講座

概要

 GPC法(SEC法)は、ポリマーの分子量測定法として、最も広く用いられている方法です。最近では、装置やカラム、ソフトウエアの進歩により、誰でも比較的容易に再現性のあるデータが得られるようになっています。しかし、その原理についてはあまり理解されていないことが多く、時には、誤ったデータの解釈をしてしまうことがあるかもしれません。そこで、GPC法の原理について解説します。

1.はじめに

 GPC法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー)は、SEC法(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)、またはGFC法(Gel Filtration Chromatography;ゲルろ過クロマトグラフィー)とも呼ばれている液体クロマトグラフィーの1つです。SEC法は、多孔質充填剤を詰めたカラム中において、充填剤表面の細孔とポリマーとの「サイズ排除」(Size Exclusion)機構を原理としています。このため、最近ではGPC法やGFC法に換わり、SEC法という呼び名が一般的になりつつあります。(特に、学術論文や学会発表においては、「SEC法」が標準となっています)。

2.分離の原理

 GPC法(SEC法)の原理(サイズ排除機構)は、一般的に次のようなモデルで説明されます。図1に示すように、大きなサイズのポリマーは、多孔質充填剤の深部へは到達できないため、結果的に短い流路を通り、最も早く出口に達します。一方、小さなポリマーほど深部へ到達できるため、流路が長くなり、カラム出口に到達するのが遅くなります。この原理により、分子サイズの大きな成分から順次溶出することになります。つまり、GPC法によるポリマーの分離は、分子サイズの大きさ毎となります。
 従って、一般的に、「GPC法(SEC法)では分子量の違いによって分離される」と思われがちですが、これは厳密には正しくありません。それは、同一分子量であっても、分子サイズが同一ではない場合があるためです。それでは、どの様な場合が当てはまるでしょうか。それには次のような場合が当てはまります。

【図 1】サイズ排除によるポリマーの分離原理モデル 1)
(円錐モデル)

【図 1】サイズ排除によるポリマーの分離原理モデル 1)
(円錐モデル)

(1 )分子構造が異なる場合
(2 )ポリマーと溶離液(溶媒)との親和性が異なる場合
(3 )分子内に静電的な相互作用(反発、引き付け)を生じる官能基がある場合
(4 )分岐を有する場合

(1 )分子構造が異なる場合

 分子構造が異なれば、分子鎖の折れ曲がりやすさ(屈曲性)が異なるため、同じ分子量でも分子サイズは異なります。一例として、高温GPCを用いて標準ポリスチレン(PS)と標準ポリエチレン(PE)の分子量を測定して得られた較正曲線(検量線)を図2に示します。PSPEでは、同一の溶出時間では分子量が2倍以上も異なることがわかります。

【図2】高温SECによる較正曲線

【図2】高温SECによる較正曲線

(2)ポリマーと溶離液(溶媒)との親和性が異なる場合

 例えば溶離液(溶媒)と親和性の高いポリマーでは、分子鎖が広がり、分子サイズは大きくなりますが、親和性が低いと反発するため、分子サイズは小さくなります。つまり、同じポリマーでも、用いる溶離液(溶媒)によって分子サイズが異なる可能性があるため、GPC法で得られる分子量が異なる場合があります。(図3

【図3】ポリマーと溶媒の親和性のイメージ

【図3】ポリマーと溶媒の親和性のイメージ

(3)分子内に静電的な相互作用(反発、引き付け)を生じる官能基がある場合

分子内に互いに反発する官能基を有する場合、分子鎖が広がり、分子サイズが大きくなります。逆に引きつけ合う官能基を有する場合は分子サイズが小さくなります。特にイオン性ポリマーではこのような現象が起こる可能性があり、(2)と併せて使用する溶離液組成により、得られる分子量が大きく影響されます。(図4)

【図4】分子内に極性基を有する場合のイメージ

【図4】分子内に極性基を有する場合のイメージ

(4)分岐を有する場合

 図5に示すように、同一分子サイズのポリマーを考えると、分岐ポリマーの方が分子量が大きくなることが分かります。言い換えると、同一分子量の場合、分岐が多いほど分子サイズは小さくなります。

【図5】分子サイズが等しい直鎖ポリマーと分岐ポリマーのイメージ

【図5】分子サイズが等しい直鎖ポリマーと分岐ポリマーのイメージ

3.分子量の計算

 GPC法では、質量分析装置のように直接分子量を求めることができません。分子量を求めるためには、溶出時間と分子量との関係をあらかじめ求めておき、これに基づいて溶出時間を分子量に置き換える必要があります。この時に用いる「溶出時間と分子量との関係」を示すグラフを「較正曲線」(又は検量線)といいます。「溶出時間と分子量との関係」は、前述の(1)のように、ポリマーの種類毎に異なるため、原則としては、測定対象と同一構造で分子量既知の分子量分布の狭い標準ポリマーを用いる必要があります。しかし、現実的には困難な場合がほとんどのため、実際は、市販の標準ポリマーを用います。一例を表1に示します。GPC法で得られる分子量は、あくまで「標準ポリマーと同一構造であると仮定した場合の分子量」であり、「標準ポリマー換算分子量」となります。従って、標準ポリマーと測定対象のポリマーの分子構造が大きく異なる場合、真の分子量とのずれは大きくなる可能性があります。

【表1】代表的な標準ポリマー

標準ポリマー

用いられる主な溶離液

ポリスチレン (PS)

THF, クロロホルム, トルエン, DMF, NMP

ポリメタクリル酸メチル (PMMA)

HFIP, TFEA

ポリエチレンオキサイド (PEO)

水溶液, メタノール

プルラン

水溶液, DMSO

 GPC法から得られる主な平均分子量には以下のものがあります。
 (1)数平均分子量(Mn
 (2)重量平均分子量(Mw
 (3)z平均分子量(Mz

 これらは、式(1)~(3)で定義されています。ここで、Nはポリマー分子の数、Mは分子量、Cは試料濃度です。試料濃度C(wt./vol.)は、モノマーの単位数に比例するため、C= MNとなります。

 ここで、(1)式から、Mnは単純な算術平均であることがわかります。また、Mwは、分子量を重みとして用いた加重平均Mzは、分子量の2乗を重みとして用いた加重平均です。各平均分子量は、以下のような特徴があります。

【図6】 分子量分布と平均分子量(例)
(Mpはピークトップ分子量を示す)

【図6】 分子量分布と平均分子量()
(Mpはピークトップ分子量を示す)

Mn:低分子量の存在に影響を受けやすい
Mw:高分子量の存在に影響を受けやすい
MzMwよりもさらに高分子量の存在に影響を受けやすい
 MnMwMz  (6)

 なお、MnMwMzとなるのは、分子量分布がない単分散ポリマーの場合です。また、分子量の広がり(分子量分布)を評価する指標として、MwMnの比(Mw/Mn)や、MzMwの比(Mz/Mw)が用いられます。

これらの比が大きいほど分子量分布が広いと判断できるため、これら3つの平均分子量から、そのポリマーがどのような分子量パターンをしているかをイメージすることが可能となります。

 GPC法から、分子量分布曲線を求めることができます。分子量分布曲線には「微分分子量分布曲線」と「積分分子量分布曲線」の2種類があります。(図7

【図7】分子量分布曲線

【図7】分子量分布曲線

このうち、微分分子量分布曲線は最も馴染みがあるため、単に「分子量分布曲線」というと、多くの場合はこちらを指します。微分分子量分布曲線は、全体の分子量分布のイメージを理解しやすくポリマー間の分子量の比較もしやすい曲線です。これに対し、積分分子量分布曲線は、文字通り、全体に占めるある分子量の割合を示したもので、「分子量1000以下の割合は○○%」などを求める際に有用です。積分分子量分布曲線の縦軸は全体に占める割合を示していますが、微分分子量分布曲の縦軸は、単なる濃度分率ではありません。この縦軸は「濃度分率を分子量の対数値で微分した値」です。この意味を以下で説明します。
GPCによって得られたクロマトグラムから微分分子量分布曲線を求めるためには、どの様にするでしょうか・・・・
 (1)ベースラインを引いて、ピークを指定する。
 (2)較正曲線を用いて、溶出時間を分子量に換算する。
 (3)ピーク面積を求め、それぞれの溶出時間の濃度分率を求める。
 (4)横軸に分子量(対数値)、縦軸に濃度分率をプロットする。
これでできあがり・・・・。と思われがちですが、実はこれは間違いです。どこが違うかというと、(4)が違います。正しくは、
(4)濃度分率を順次積算していき、横軸に分子量(対数値)、縦軸に濃度分率の積算値をプロットする。(積分分子量分布曲線の完成)
(5)各分子量における曲線の微分値(積分分子量分布曲線の傾き)を求める。
(6)横軸に分子量(対数値)、縦軸に微分値をプロットする。(微分分子量分布曲線の完成)

となります。(図8)濃度分率を分子量の対数値で微分するから、「微分分子量分布」なのです。このため、微分分子量分布曲線の縦軸は”dw/dLog(M)”(濃度分率を分子量の対数値で微分した値)という値となります。なお、較正曲線が1次式で近似されている場合は、結果的に「濃度分率を分子量の対数値で微分した値」と「濃度分率」は比例するため、どちらを縦軸にとっても同じ形状となります。

 何故、このような面倒な計算をする必要があるのでしょうか?それは、異なったカラムで測定する場合、較正曲線も試料の溶出曲線も異なります。このため、縦軸を重量分率のままにしておくと、分子量分布曲線が違ってしまうためです。1つのポリマーの分子量分布は1つであるため、理想的には、どの様なカラムで測定しようとも、1つのポリマーの分子量分布は同一となるはずです。従って、これを補正するために、縦軸は「濃度分率を分子量の対数値で微分した値」とするのです。(ただし、実際には、様々な要因から、用いるカラムが異なると、得られる分子量分布曲線は同一にはなりませんが)

下記に参考文献を挙げておきますので、もっと詳しく知りたい方は参照して下さい。

参考文献  :

  1. 森定雄著,“サイズ排除クロマトグラフィー”,共立出版(1991)
    : 初心者から上級者まで幅広く使用できる参考書 お勧め!
  2. S.Mori, H.G.Barth, “Size Exclusion Chromatography”, Springer (1999)
    : 1)の英語版。内容はほとんど同じ
  3. Chi-San Wu, “Column Handbook for Size Exclusion Chromatography”,Academic Press (1999)
    : 各種メーカーのカラム特性なども記述された応用編
  4. A.M.Striegel, W.W.Yau, J.J.Kirkland, D.D.Biy, “Modern Size-Exclusion LiquidChromatography”, Wiley (2009)
    : 基礎から応用まで。2D-LCなども記述有り
適用分野
プラスチック、ゴム、医薬品、化粧品、農薬

CONTACTぜひ、お問い合わせください

弊社の分析技術について、納期やコストについてご検討の方は、
お問い合わせフォームより問い合わせください。