概要
高分子材料は劣化によって力学特性が低下します。力学特性の代表的な評価手法として引張試験がありますが、サンプルが少量の場合ではJIS法に基づいた試験片が作成できないために、正確に評価できません。このような場合でも、GPC法によって分子量を測定することで、劣化状態が評価できます。
本レポートでは、ポリプロピレン(PP)について耐候性試験を行い、引張特性と分子量の関係を調べた結果を紹介いたします。
分析事例
光劣化試料の作成
- 射出成形によってJIS K7162試験片 1B号を成形
- 成形した試験片を、UV照射によって光劣化 (UV照射時間:0、12、24、48、72h)
実験
- ・引張試験
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試験片 JIS K 7113 2 (1/2)号 厚み0.1mm 引張速度 5mm/min - ・GPC測定
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装置 HLC-8121GPC/HT (東ソー製) カラム TSKgel GMHHR -H(20)HT (7.8mmφ×30cm) 3本 (東ソー製) 溶解液 1,2,4-トリクロロベンゼン カラム温度 140℃
結果
- (1) 引張試験
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- UV照射時間と破断ひずみとの関係を図1に示します。
- UV照射12時間では破断ひずみはほとんど変化しませんが、24時間では破断ひずみは著しく低くなり、それ以上経過しても破断ひずみはほとんど変化しない傾向が見られました。
- (2) GPC測定
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- UV照射時間とMwとの関係を図2に示します。
- 破断ひずみの場合と同様に、UV照射初期でMwが急激に低下し、その後大きく変化しないという傾向が見られました。
- (3) 引張特性と分子量の関係
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- Mwに対して破断ひずみを両対数プロットした結果を図3に示します。
- 図3より、Mwと破断ひずみが相関関係にあることがわかりました。この関係は、HDPEによっても成立することが高取1によって報告されており、PPにおいてもHDPEと同様にMwが破断ひずみと強く関係していることが示唆されました。
参考文献
- Journal of the Society of Rheology, Japan Vol.42 (2014)
まとめ
GPC測定によって得られるMwと引張破断ひずみが相関関係にあることが明らかになりました。今回の結果から、試料の形状や量の問題で引張試験が困難な試料においても、GPC測定によって劣化の程度を予測することができると考えられます。