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技術資料
No.T2320 | 2024.01.11

NMR応用例

~溶液NMR測定法紹介 ②HSQC-TOCSY~

概要

 NMR入門講座⑥(T2210では、化学結合に基づく2次元NMR測定法4種(COSY, TOCSY, HSQC, HMBC)を紹介しました。本資料では、分子の部分構造解析に役立つ2次元NMR測定法である1H-1H TOCSYの拡張版として1H-13C HSQC-TOCSYを紹介します。HSQC-TOCSY1Hよりピーク分離の良い13Cを利用することで、より複雑な化合物の部分構造の把握が可能です。

分析方法・分析装置

分析方法 2次元NMR 1H-1H TOCSY 1H-13C HSQC-TOCSY
分析装置 500MHz NMR

試料

 スクロース重水溶液

結果

1H-1H TOCSY

 NMRスペクトルを解析する上で最初のステップとして、ピークを部分構造ごとに分類できると便利です。1H-1H TOCSYH が連続する構造(スピン結合ネットワーク)をまとめて検出できるため部分構造の把握に役立ちます。
 スクロースの2次元1H-1H TOCSYスペクトルを図1に示します。図1より、スクロースの構成単糖であるグルコースとフルクトースがそれぞれ格子状のピーク群として観測されており、部分構造の識別が可能です。

【図1】 スクロースの1H-1H TOCSYスペクトル

【図1】 スクロースの1H-1H TOCSYスペクトル

1H-13C HSQC-TOCSY

 1H NMRは検出範囲が10 ppm程度と狭くかつピーク分裂もあるため、1H-1H TOCSYではしばしばピークが重複し解析の妨害となります。そのような場合にはピーク分離の良い13Cを利用した1H-13C HSQC-TOCSYが有効です。
 スクロースの2次元1H-13C HSQC-TOCSYスペクトルを図2に示します。図2の横軸は1H、縦軸は13Cです。通常の1H-1H TOCSYと同様に構成単糖のグルコースとフルクトースがそれぞれ格子状のピーク群として観測されており、部分構造の識別が可能です。1Hと比べると13C方向ではピーク重複が無く部分構造の帰属がより明瞭です。

【図2】 スクロースの1H-13C HSQC-TOCSYスペクトル

【図2】 スクロースの1H-13C HSQC-TOCSYスペクトル

 

まとめ

 1H-13C HSQC-TOCSYは、分子の部分構造を把握可能な2次元NMR測定法であり、13Cを利用することで通常のTOCSYよりピーク分離に優れます。1H-1H TOCSYではピークが重複する複雑な化合物の解析に有効です。本測定は700MHz NMR5mmCryoプローブ)の活用により、さらなる高感度・高分解能化が可能です。

適用分野
NMR、分子構造解析
キーワード
溶液NMR、2次元NMR、HSQC-TOCSY、糖鎖、有機化合物

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