概要
AFM-IRは、ナノメートルオーダーで材料の組成をイメージングできる装置です。本資料では、市販の自動車用充電コネクタに使用されている樹脂の組成分布解析事例をご紹介します。
分析
試料 : 市販の自動車用充電コネクタ(カーチャージャー) (PC/PBT樹脂と記載あり)
装置 : AFM-IR (Molecular Vista社製 Vista One)
※PiFM(Photo-induced Force Microscope)方式により空間分解能10 nmでケミカルイメージングが可能な最新モデル 【装置紹介 A2301】
結果
【図1】にAFM-IR測定の結果を示します。
【図1】(a)に示す形状像中の特徴的な位置において、PiFMスペクトル(【図1】(f))を取得しました。PiFMスペクトルはIRレーザーによって誘起された双極子をAFMによって検出したもので、FT-IRに類似したスペクトルになります。得られたPiFMスペクトルをFT-IRライブラリと照合した結果、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PBT)、および金属酸化物に帰属されました。
次に各成分の固有波数でマッピングした結果、相構造が【図1】(b)~(d)に示すように可視化されました。一方、これらのマッピング像を重ね合わせた【図1】(e)では、いずれの成分にも対応しない領域(黄色)が確認されました。この領域のPiFMスペクトルからは、アクリル樹脂に特徴的なピークが認められました。
【図1】ポリマーアロイのAFM-IR測定結果
次に、AFM-IRで確認された金属酸化物の金属種を定性するため、TEM-EDSを用いて元素マッピングを行いました。その結果、チタン(Ti)、アンチモン(Sb)、および酸素(O)が検出されました【技術資料 No.T2223】。
【図2】ポリマーアロイのTEM-EDS元素マッピング
まとめ
AFM-IRから取得したPiFMスペクトルを元にFT-IRライブラリを用いて成分を定性し、さらにTEM-EDSによる元素マッピング結果と併せて解析することで、3種の樹脂および金属酸化物から成る市販ポリマーアロイの組成分布を明らかにすることができました。