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技術資料
No.T2213 | 2022.10.27

類似化合物の混合試料のNMRスペクトル分離

13C INEPT DOSY測定 ~

概要

DOSY(Diffusion Ordered SpectroscopY)は、パルス磁場勾配を利用して分子の拡散現象を観測する2次元NMR法です。混合物からなる試料に適用すると、拡散係数(分子量)に応じて異なる位置にピークが観測されるため、化合物ごとにスペクトル分離が可能です。通常の1H核のDOSYにおいて、多成分かつ多数のピークが重複する領域では、成分ごとの拡散係数の算出はしばしば困難になります。このような場合は1H核より広い化学シフトにピークが検出される13C核を利用したDOSY測定が選択肢となります。弊社の高感度700MHz NMR装置は比較的低感度な13C検出測定の測定時間短縮に有効です。
弊社では、結合した1Hから13Cへの磁化移動により感度が増強されるINEPT*1を採用した13C INEPT-DOSY測定を導入しています。

*1 Insensive Nuclei Enhanced by Polarization Transfer

分析方法・分析装置

・分析方法 :2次元13C INEPT-DOSY
・分析装置 :700MHz NMR、500MHz NMR

以下にパルスシーケンスダイアグラムを示します。

【図1】 13C INEPT-DOSYのパルスシーケンス

 

試料

脂肪族炭化水素(ペンタン(C5)、へプタン(C7)、ノナン(C9))混合重ベンゼン溶液

結果

試料の1H NMRスペクトル(図2 (a))を見ると、炭化水素のCH3及びCH2がそれぞれ一塊のピークとして観測されており、含有成分の解析は困難です。そこで、13C化学シフトを利用したピークの分離と、それらピークの成分毎の分離解析が可能な13C INEPT-DOSYを測定しました(図2 (b))。13C NMRスペクトルでは各成分の構成炭素のピークが広範囲に分離して観測されるため(図2 (b)横軸)、DOSY解析により自己拡散係数(分子量)に応じた成分毎のスペクトル分離が可能です(図2 (b)縦軸)。
2次元13C INEPT-DOSYスペクトル(図2 (b))から取り出した成分(i)~(iii)の13C投影スペクトルを図3に示します。混合物のNMRスペクトルを成分毎の1次元スペクトルに分離することで、含有成分の構造解析・同定ができました。

【図2】 混合試料の (a) 1H NMRスペクトル、(b) 13C INEPT-DOSYスペクトル


【図3】 2次元13C INEPT-DOSYスペクトル(図2 (b))より得られた成分(i)~(iii)の13C投影スペクトル (i) ノナン(C9) (A: 14.7 ppm, B: 23.5 ppm, C: 32.7 ppm, D: 30.2 ppm, E: 30.4 ppm)
(ii) へプタン(C7) (F: 14.7 ppm, G: 23.5 ppm, H: 32.6 ppm, I: 29.8 ppm)
(iii) ペンタン(C5) (J: 14.6 ppm, K: 23.1 ppm, L: 34.8 ppm)

まとめ

2次元13C INEPT-DOSY測定では、混合試料の13C NMRスペクトルから化合物毎にスペクトル分離を行うことが可能です。今回の測定では構造の類似な炭化水素を分離し、構造解析を行うことが可能でした。
芳香族化合物の混合試料やポリマーとオリゴマーの混合試料等、1H NMRスペクトルではピーク重複が激しく解析困難な試料の構造解析への活用が期待されます。

適用分野
NMR、分子構造解析、分子運動性解析
キーワード
有機化合物

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