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技術資料
No.T2524 | 2026.02.12

NMRによるPEEKの酸劣化構造解析

概要

 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は高耐久性を特長とするスーパーエンジニアリングプラスチックの一種ですが、硝酸を用いた浸漬加熱試験によりGPC測定で劣化の進行が確認されました(T2429参照)。
 そこで本資料では硝酸劣化したPEEKのポリマー分子構造を、高感度NMR装置(700MHz, 5mm Cryoプローブ)を用いた溶液NMRにより解析した結果について紹介します。

分析方法・分析装置

  • 分析方法 : 拡散フィルター13C NMR,  1H-13C LR-HSQMBC
  • 分析装置 : 700MHz NMR, 5mm Cryoプローブ

試料

 PEEK(50%硝酸、50℃浸漬加熱品)7%溶液(PFP/1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2 =2/1, v/v

結果

1) 拡散フィルター13C NMRによるポリマー成分の選択的検出

 試料の通常13C NMRおよび拡散フィルター13C NMRスペクトルを図1に示します。通常測定では溶媒や分解物等の低分子由来ピークとの重複により複雑なスペクトルが検出されましたが、拡散フィルター測定(T2323参照)のパラメータを適切に調整することで、ポリマー成分の選択的検出が可能です。

【図1】試料のⅰ)通常13C NMRおよびⅱ)拡散フィルター13C NMRスペクトル

【図1】試料のⅰ)通常13C NMRおよびⅱ)拡散フィルター13C NMRスペクトル

2) 1H-13C LR-HSQMBCによる構造同定

 図1の各ピークを各種二次元測定(1H-13C HSQC, HMBC, LR-HSQMBC)により帰属しました(図2)。PEEKの構造上、一般的に用いるHMBCでは芳香環内の相関(図2の点線で繋いだ格子状のピーク群)のみ検出され完全な構造同定が困難でした。そこで、遠距離結合を観測可能なLR-HSQMBCT2110参照)を用いた結果、新たに隣接モノマー間の相関(図2右側の紫点線で囲んだピーク)の検出に成功しました。

【図2】試料のHMBCおよびLR-HSQMBCスペクトル
(いずれもHSQC(赤)との重ね書きで示しました)

【図2】試料のHMBCおよびLR-HSQMBCスペクトル
(いずれもHSQC(赤)との重ね書きで示しました)

 図2の帰属を拡散フィルター13C NMRスペクトル上に示しました(図3左側)。硝酸劣化したPEEKの主成分としてヒドロキノン部がニトロ化されたポリマー構造が同定されました。また、13C 定量測定の積分値よりニトロ化割合を算出した結果(式1)、6週経過時点(ニトロ化割合87%)で頭打ち傾向でした(図3右側)。

【図3】拡散フィルター13C NMRスペクトルに対する帰属と同定構造およびニトロ化割合の経時変化

【図3】拡散フィルター13C NMRスペクトルに対する帰属と同定構造およびニトロ化割合の経時変化

まとめ

 高感度NMR装置(700MHz, 5mm Cryoプローブ)およびNMR測定の応用技術によりPEEKの酸劣化構造解析が可能です。本手法は芳香族系の難溶解性ポリマー(ポリイミド、アラミド、LCP等)への適用が期待されます。

適用分野
高分子材料、プラスチック
キーワード
エンプラ、難溶解性樹脂、DOSY

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